コロナウィルス感染拡大への対策が各国でとられており、オランダでもロックダウンよりは緩やかな「インテリジェント・ロックダウン」政策がとられています。
ミュージアムや学校は閉鎖、できる限り在宅勤務、不必要な外出、他人との接触は避ける、飲食店、ホテルは閉鎖、複数での外出などには罰金の可能性もあり、というものです。4月28日には今後の対策・方針が発表されるという予定になっています。
JCEではこれまで、日本の高齢者介護専門の方々対象に、オランダの高齢者介護施設や団体への視察手配を行ってきました。今回のコロナウィルス感染拡大により、これら施設や介護状況への様々な影響に関しても心配しつつ見守ってきました。今週オランダでは、高齢者に関する幾つかのニュースが見られました。これらを取り上げ、オランダの高齢者介護の現状を日本語でアップデートしていきます。
オランダ社会はマスク嫌い?
高齢者政策としてできるだけ長い期間の在宅介護を推進しているオランダですが、世界的にも知られる在宅ケア組織「ビュートゾルフ (Buurtzorg)」の創設者・ディレクターのヨス・デ・ブロック氏が4月13日、オランダの新聞社NRCのインタビューに答え、とても話題になりました。
デ・ブロック氏は医療提供者や介護福祉提供者にマスク等の十分な防御具が行き届いておらず、また感染のテストも受けていないため、彼らがコロナウィルス感染の主要な原因の一つとなっていると指摘。感染者の56%はヘルスケア部門、ナイメーヘン地域では17の老人ホームで、10人中4人の従業員が感染していることが判明しました。
世界展開しているビュートゾルフでは、中国や台湾の支店を通して、今回のコロナウィルスにまつわる状況がいかに深刻になるかに、早い段階で気づいていました。マスクの必要性に対しても認識し、自分たちでのマスクの生産も行っています。全国に1000か所の所在地があるため、独自の流通センターを持っていることで、今回は独自に敏速な対応ができているようです。
このインタビューが出た後日に開かれた政府のプレスコンファレンスでも、記者からはいくつかのマスクについての質問が出ています。オランダ政府はマスクの着用をあまり勧めておらず、これは供給の不足が原因とのことです。(くわしくはオランダニュース「ポートフォリオ」参照)
滞る在宅介護により、孤独な高齢者の増加
コロナウイルスが原因で、多くの在宅ケアがケアの休止状態にあり、在宅ケアまたは地域の看護師による在宅介護を受ける患者の約3分の1は、介護の極端な減少や停止を経験していると、オランダ患者連盟が独自のリサーチに基づいた発表を行いました。
主に停止しているサポートは、住宅援助、洗濯や着替え、家事援助などの日常的なサポート、また心理的援助とデイケアなどで、患者のコロナウイルス感染への恐れ、自身が感染リスクの高いグループに属しているため在宅ケアをキャンセルする患者があること、また病気によるスタッフの休職などがこの現状の主な原因のようです。
加えて、医療スタッフがすでに忙しいため、自分の質問が緊急性の高いものではないと感じる”患者からの遠慮”も、この状況に拍車をかけています。
在宅介護スタッフの減少により、介護が家族らに依存されますが、家族の中でも、自分たちからの高齢な家族への感染を恐れ、リモートで連絡を取り合う人々が増加しています。調査によると、72%が電話、24%がビデオチャットを利用しています。
このような状況から患者や家族の介護者の孤独や社会的孤立が目立ってきています。オランダ患者連盟は、在宅介護スタッフが使用できるマスクやその他の保護具が、介護家族には行き渡っていないことも指摘しています。
なお、介護福祉雇用者団体のZorgthuisnlの局長ハンス・バウイング氏からは、この患者連盟の発表した数字を疑問視する声も上がっています。