Time & Styleの開設

Time & Styleの開設

海外に住むと日本人であっても客観的でニュートラルな立場で母国の文化を洞察し、ポジティブに映る点・ネガティブに映る点がより鮮明且つ強烈に心に響いてくるのを感じる事が多く、その中で改めて日本文化に関する新たな発見も数多くある。残念ながら日本に住んでいたとしても、古来より伝わる文化を実感するのは「お正月」と言った季節の節目節目のみであり、すっかり西洋スタイルへ傾倒した現代生活の中に埋没し、普段それを実感する機会は非常に少ない。皮肉な事に、海外に住んでみて改めて日本の伝統文化に存在する、本来の日本の美と、質の高さに驚かされる事が多いのが事実である。

  Time & Styleとの本格的な出会いは、2017年アムステルダムで行われたMONO Japanにて。東京及びその近郊に10年近く住んでいたにも関わらず、恥ずかしながら1997年より東京に店を構えるTime & Styleの存在を知ることは無った。しかし、その出会いは遅すぎる事は無く、Mono JapanでのTime & Styleの印象に私は完全に陶酔されてしまった。出展スペースに入るなり、目の前には上品で華奢なキャビネットに入った、優美な形をしたシャンパン・ワイングラスが並び、その奥には、石川県山中で作れた漆器の汁椀。持つと驚く程軽く、手にしっとりと包まれる。驚きで思わず声が出た。その反応は、国籍を問わずTime & Styleのスペースに訪れた方皆同様で、一様にダイニングテーブル及び椅子の滑らかで繊細な肌触りを確かめ、人によってはテーブルの高さに目線を近づけ、数分じいっと見つめ続けている人もいる。店員の方に聞くと、全ては日本の伝統技能をもった職人がひとつひとつ手塩に掛けて作成された、正に「Made In Japan」の品々。「日本の美」が世界を共感させているのである。

 

  2017年3月23日待ちに待ったTime & Styleアムステルダム店のオープンの日。建物は1888年に建設された時計台が聳えるレンガ造りの建物。地下一階地上4階の約900m2という広い店内に一歩入ると、静寂の中に心地よい緊張が満ち、そして緻密に深く考え抜かれたデザインの家具、ランプ、食器、リネンが陳列されているが、そのひとつひとつが独特の存在感を放ち、まるで国宝を集めた美術館のようである。中でも個人的に衝撃が走ったのが、白磁と盆栽が置かれたキャビネットと、その上に掛けられた日本の「書」とのコンビネーション。その両脇から、美濃の手すき和紙と国産杉を用いた「行燈」が日本らしい落ち着きのある光を放っている。オープニングレセプションではその店内にジャズが流れ、落ち着きと驚きの混じった何とも贅沢な時間を過ごさせて貰った。

 

  一様に、彼らの商品の全てには一貫した哲学が込められているように感じる。それは日本の伝統美と現代の生活スタイルとの「フュージョン(融合)」であり、日本人の本質的な人格形成にも繋がっていると思われる「ものづくり」の精神から生み出される本来の「日本の美」は、時の経過の影響を受けることなく、世代を超えて受け継がれていくことだろう。まさに現代と過去が交錯するコンテンポラリーな空間を提供してくれるTime & Styleは、我々日本人にも伝統の美を再認識させると共に、世界をも共感させる、日本人にとっても非常に誇らしい存在である。

田代雅子