クラフト物に深く思いを巡らせて

クラフト物に深く思いを巡らせて

JCEで現在もう一名ボランティアでお手伝いいただいている田代雅子さん。今年2月にアムステルダムにて行われた日本モノの展示即売会「MONO JAPAN」でもうきは市の通訳として大変活躍していただきました。アムステルダムで日本人として日本のモノや背景を紹介するという経験を通して田代さんが感じた体験談をご紹介します。

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一般的に私達は自身の文化を当たり前に存在するものと考え、その「物」が如何にして作られたか、また私達のライフスタイルに適合させる為にどのように変革されてきたのかを理解しているつもりでいる。それでは、その「物」がどうやって、また、どんな熱い想いを巡らせて作られかを十分に説明出来るかと問われると、自身の文化であるにも関わらず、残念ながら私達の多くは十分な説明が出来ると自信を持って言い切る事が出来ない。
私自身もこのイベントに参加するまでは、その一人であった。

MONO JAPANの開催期間中、これまでに無い程、伝統の美に触れた事により、まるで多くの脳細胞が生まれ変わったかのように、既成概念が変わってしまったようだ。私も幸い一人のMONO JAPANのスタッフとして、準備段階から関わらせて頂いた事から、多くの出展者との関わりを持つ事が出来、その彼ら自身の多くが職人・ビジネスオーナー・クリエーター達であった。彼等からその商品にまつわる歴史、そしてゾクゾクしてしまうような技巧的な話を聞くにつれ、それぞれに共通する哲学のようなものが有るように感じた。それは、「モノづくりの際に作品に注入する情熱」と「モノのシンプルさ」である。
過去から受け継がれた高度な技術と、時間を要する工程を経て、彼らは極力シンプルな作品作りを目指しているのか、若しくは単にそう見えてしまうだけなのか?然しながら、それらの作品にはこれまで感じた事が無いような、威厳に満ちた優美さが必ず備わっているのである。その時点で私は完全にその「もの」に取り憑かれ、更にその奥にあるモノ作りの詳細までを調べずにはいられなかった。
そして思わず、「それでは、今まで私は、自身の文化というものの何を知ってたのか?」と自分に問わずにはいられなかった。

ここ数十年の間で、大量生産された工場製品の恩恵を享受し、また日本人口そのものの減少により、伝承技術とその精神が失われつつあるのは事実である。然しながら、このMONO JAPANというイベントにより、多くの若い担い手達が彼らの伝統をより活性化させる為に、海外にマーケットを求め、また、これまで無い革新的なチャレンジを行っているという事実を証明している。更に、このイベントで特徴的なのが、それぞれのショップにて直接これらの作り手達から伝承技術の話が聞けるだけでなく、平行してそれぞれの分野に特化したスペシャリストによるレクチャーが開催されており、より専門的な観点での話が聞ける点は、知的好奇心を十分に満たしてくれるものと言える。また、他の多くの来場者はもっと単純に、ロイドホテルの特徴的な部屋の内装とショップの融合を楽しむ、というような方も多いだろう。

私は未だに一人のオランダ人の若い女性から言われた言葉が忘れられない、
「私、日本の磁器「中毒」なの。とってもシンプルに見えるけど、実はそうじゃないんだって、知ってるの。」
クラフト物に深く思いを巡らせてみれば、必ずあなたにとって特別な「唯一無二」の品物が見つかる事でしょう。既に来年の開催が待ち遠い。

田代雅子